さて、「お答えします!」の3番目の項目として「どうしたらボールが曲がるのか」を説明しています。これは、正直なところほんのちょっとでもボールが曲がりさえすればよい人のための説明でありまして、本格的にスコアメイクにフックボールを用いようとする人には不十分なものとなっています。
それからお断りしておかなければならないのですが、ここでは「フックボールを投げるには、こうしろ!」というアドバイスはしないことにします・・・というか出来ません(^_^;)
フックボールの技術的アドバイスをどのように皆さんにお教えしようかと色々考えたのですが、一言にフックボールと言ってもどのような曲がり・ライン取りをイメージしているのかは十人十色です。ボウリングは、かなりメンタルなスポーツであり人と同じ事をすれば自分も同じスタイルのボウラーになれるというわけではありませんよね。現に私も様々な人にコーチしてもらったのですが、「これだ!」と言うものに出会えず、結局投げ込みによって自分なりのフックスタイルを作りました。
つまりは、投げ込んで一つ一つの要素を自分の身体で感じ取って自分のものにしていかなければならないと思うのですが、しかし
フックボールを投げるための理屈があることも確か
です。ですので、今回は私が身体で感じ取ったこと・力学的な理屈をおりまぜて、フックボール上達のベースとなるものを要素ごとに分けて説明していきたいと思います。
また、今まで「お答えします!」の中でお答えしてきたことをここで重複させてもスペースの無駄になってしまいますので、これから説明するフックボールの要素と併せて見ていただきたい回答をリストアップしておきます。
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リリースの時のリフト感は、どうしたら出せるの?
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インサイドからの投げ方のコツは?
フック回転の概略
まず、フックボールの回転について考えてみましょう。左の図は、
上から見たボールの進行方向と回転方向を説明しているものです。
ボールが進む方向とは相反する方向に回転がかかっているのがお分かりいただけると思います。この進行方向に対して横方向にかかっている回転が、ピンそばでレーンとの摩擦力によってフックの曲がりに繋がっているわけです。しかし、ボールには進行方向にそのまま進みたいという慣性力がありますから、その慣性力に勝るための高回転がフックボールには要求されます。私の経験的な数字を言うと、スコアメイクに必要なフックボールには、ボールが手から放れてからポケットにヒットするまでに8回転以上の回転数が必要だと思います。これは結構大変なんですよ。
フック回転の理屈
次に、ボールに回転を与えるための理屈を説明します。「
どうやったらボールが曲がるの?
」でも説明しましたが、初心者の方で無理やりボールを曲げようとする場合のほとんどがリリースの瞬間に手首をひねる(こねる)動作をしています。これではボールが水平方向に回転しているだけでフックに必要なレーンとボールの摩擦力を得ることが出来ません。言ってみれば最近話題の「UFOボール」になってしまいます。
お答えします! のなかに、時々「手が外側に折れ曲がっていると・・・」と説明していることがありますが、これは左側のことを示しています。ボールの重さに手首が負けて外側に折れ曲がってしまっていると、ボールを離したときにそのまま真下に落ちてしまい、回転をかけるどころの話ではなくなってしまいます。
これに対して右側は、腕と手首が一直線に(ロックすると言います)なっています。この状態でボールを離そうとする場合は、必然的に親指が先に抜けて次に中指・薬指が抜ける順番になり、結果として右側のようにボールに回転がかかりながらリリースすることが出来るのです。中指・薬指が抜けるときに指を引っかけるようにするとさらに回転力を付けられるようになります。
しかし6〜7kgもある重いボールをロックすることは、かなりの手首の力が必要ですし無理にロックしようとすると手首や腕の筋を痛める可能性もあります。そのためにマングースやメカテクターと言ったリスタイがありますので手首に自信のない方はリスタイを使うと良いでしょう。
よく、本などで「手をボールの下に入れる」といった説明がありますが、これはリリースの時点で右側のロックした状態よりもさらに手首を内側に曲げることで、ボールにさらなる回転を付けるためのテクニックの一つですが、よほど手首の力に自信のある方やクランカー志望の方以外はする必要がないと思います。
次に考えるのが、ボールの回転角度です。レーンコンディションや、ポケットへの入射角を何度にすると考えているかにもよりますが、ボールの進行方向に対して45度前後が基本になると思います。「
どうやったらボールが曲がるの?
」の中で説明している、親指を10時〜10時半の向きにすると言うことがこれに当たります。
そして、投げたボールがボールリターンに返ってきたら、ボールに付いているオイルの状態を見て下さい。下にあげた3つの画像の黄色い帯(オイルが付いている帯は、レーンと接触している場所であることを意味していて、この帯のことをローリングトラックと言います)は、ボールに付いてきたオイルを示していて大体この3つの内のどれかに当てはまるはずです。
1のようなオイルの付き方は、手首をこねる(ひねる)動作が大きい場合になります。UFOボールもこれに近いオイルの付き方になります。これではボールが水平方向に回転しているだけでフックに必要なレーンとボールの摩擦力を得ることが出来ません。俗に「スピナー」の回転と言います。
2のようなオイルの付き方は、フックボールの理想と言われているものです。回転する物体は、その物体の重心がずれている場合に自分自身の重量バランスの釣り合いをとろうとして回転形態を変えて行きます。だるまは、最下部にある重りによって立っている状態が一番バランスが取れているので、だるまを横にして転がすと曲がりを見せながら起きあがるのです。ボールの重心の偏りは、このローリングトラック上付近にあるためボール自身が重量バランスを取ろうとする応力が、レーンとボールの摩擦力によりボールの進む方向を変えようとする力に助けられて急激に収束しようとするために強烈なフックを生み出します。俗に「セミローリング」の回転と言います。
3のようなオイルの付き方は、バックアップ(右投げの人の場合、右側にボールが曲がって行ってしまう回転の付け方)の場合や、リフト時に中指の引っかかりが強い場合に起こります。この場合、ボールの重心位置とローリングトラックの位置関係が遠いため、ボール自身が重量バランスを取ろうとする応力がなかなか収束しません。しかし、ドリルの仕方次第では2番と同じ結果を得ることが出来ます。俗に「フルローリング」の回転と言います。
1〜3のうち、どれがよいかと言えば無論2を中心として最低でも2〜3の間にオイルが付いてくるのが望ましいでしょう。
フックボールの実際
ここまでは、ボールの回転について考えてきましたが次はフックそのものについてです。上で説明した回転さえ付ければフックボールが投げられると思ったら大きな間違いです。レーンコンディション・スピード・回転などが複雑に絡み合ってフックボールは生まれるのです。
フックボールは、レーン上のオイルを使ってピンそばまでボールを走らせ、レーンの乾いている場所で急激にフックさせます。この
レーンの乾いている曲がり始めさせる場所をフッキングポイント
と言います。つまりフックボールというのは、回転力だけ付ければいいものではなくレーン上のオイルとフッキングポイントの関係をしっかりと押さえておかなければ実現できないのです。
図3.ライン取り1
図4.ライン取り2
上の2つの図を見て下さい。これは私が今回の説明のために勝手に想定したレーンとオイルのエリアの図です。オレンジ色で示した部分はオイルのあるエリア、緑色の部分は考えられるフッキングポイントです。普通のレーンは、このように極端なオイルの敷き方はせず幅は板目30枚、長さはピン手前30〜35フィートくらいまでの長方形型に敷きます。
図1は、俗に言う「スパット10枚ちょい出し」というフックボールの基本的なライン取りをこのレーンで投げた場合の図です。本当はもっとピンそばまでボールを走らせたいのにライン上のオイルがかなり手前で終わってしまっているので、フッキングポイントは自ずと手前になってしまい、フックボールと言うよりは手前で曲がってしまってその後は直球(このように曲がった後まっすぐに転がってしまう状態のことを「ロールアウト」と言います)になってしまいます。
対して図2は、オイルのある場所を上手に利用してピン手前のフッキングポイントにボールを運ぶためにスパットは17枚目を使っている例です。ピン直前にあるフッキングポイントまでしっかりとボールを直線的に滑らせている(オイルの上を回転させながら滑らせることを「スキッド」と言います)ことが分かりますね。
つまり、フックボールとは・・・
ただ闇雲に進行方向に対して45度の角度で回転を付けたボールを投げればブックボールになるわけではないことがお分かりいただけますでしょうか? 一般的なレーンは、図3・4のような変則的なオイルの敷き方ではなくファールラインからピンそば30〜35フィートまで均一の幅の長方形であることが多いのですが、その場合でもレーン上のオイルがどのようになっているのかを体で感じて把握していなければフックしてポケットに集まるボールを投げることは出来ません。また、フックしてポケットには集められても、安定したスコアを叩き出すにはそのレーンにマッチしたポケットへの入射角はどのくらいなのかを探る必要があります。見た目にはかっこいいかもしれませんが、フックボールの有用性を理解していなければ、単なる見せ物のフックなだけでかえって低い点数しか出せなくなってしまいます。
今までにゲストブックの方にはフックに関して様々な質問が寄せられましたが、まずうまく曲がらないと言うのは、
●ボールにかける回転力が不足している場合
●ボールのスピードがありすぎる場合
●レーンのオイルが厚い場合
●オイルがピン手前まで延ばされてしまってフッキングポイントが存在しない場合
等が考えられます。
また、曲がるときと曲がらないときの差が激しいというのは
●ボールにかける回転力が一定でない場合
●ボールのスピードが一定でない場合
●ライン取りが一定でない場合
●オイルの延び方がまだらになっていてフッキングポイントがハッキリしていない場合
等が考えられます。
何れにしてもボールに安定した回転をかけられていること、レーン上のオイルの状態を把握できていることに加えて投球の一連動作が一定かつ安定していることが必要であるのに違いはありません。フックだ、カーブだという前にまずスペアが必ず取れる練習をして下さい。スペアを確実に取れると言うことは、どこに立ってどのスパットを使えば目的のピンを倒すことが出来るのかを理解している証拠になりますし、なによりもアプローチとリリースが安定している証拠でもあります。これが出来てこそフックボールを追求する準備が出来たと言っても良いかもしれません。
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