-----Always Special Morning 4-----




「一緒に入ろう」

幼い息子の無邪気で些細な願い事。
自分たちに出来ることなら叶えてやりたい。叶えてやりたいがしかし、これには「それじゃあ」とは言えない。
何故、と言われても困るが、とにかくこれに頷くわけにはいかなかった。
「お……おれは遠慮するよ」
「どうしてー?」
「色々とやることがあるからな」
「いろいろー?」
「そ、色々。だから今日はパパと入りな」
必死に逃げようとする俊作。
その顔に浮かぶ笑顔が時々引きつるのはご愛敬というもの。
「そうだぞ。パパじゃ不満か?」
俊作の援護射撃はやはり夫たる和行の仕事だ。
その顔に浮かぶのはちょっと悪戯っ子のような表情だった。
「さんにんいっしょがいい〜」
しかし子供はあくまで無邪気に両親に嘆願する。
『一緒』に入るのに意義があると言いたげだ。
子供にとって両親はいつも『一緒』にいて、そこにはもちろん自分もいる。『3人一緒』の理由はただただ、少ない時間を過ごしたいがためなのだ。
分かってはいてもそれに頷く訳には、やはりいかないだろう。
「パパが外でお仕事するように、ママは家のお仕事があるんだ。ママを困らせちゃダメだぞ」
「やだーーいっしょがいいーー」
今日はやけに粘るな。
そう思ってもやはり3人で入るのは遠慮したいものである。
イスに座ってじたじたと足を暴れさせる陽一。もっと幼い頃は一緒に入ったこともあったのに。
「我が侭言ったらダメだぞ。ママを困らせたら何だっけー?」
ちょっと怒った顔を装い、和行は陽一を窘める。
「オバケでるぅ」
しぅんと項垂れ、元気がなくなる息子にちょっと罪悪感を感じる。
「陽一」
意気消沈した息子に柔らかな声をかける。
優しい笑顔も浮かべて、
「今度、おれと入ろうな」
よしよしとその小さな頭を撫でて浮上させようとする。
一緒には入れないが、これなら可能だ。
「甘やかすなよ」
「してないよ。こんなの甘やかしてる内に入らないって」
「そうか?」
「そうそう」
にっこり笑ってそう言う俊作に、和行はあっさり納得してしまった。
「な、陽一。それでいいよな?」
その笑顔のまま、沈んでいる息子の顔を覗き込む。
「うん!じゃーあした!」
「よし、明日な。約束だ」
「わーい♪」
よほど嬉しいのかバンザイで喜ぶ陽一だった。
その息子を微笑んで見守る浅川夫婦。
こんな些細なことで喜ぶ陽一が愛しくてならない。
親ばかだと思うが、世の親は多かれ少なかれ親ばかなものだと、子供を持って分かった。
「ほらほら。早く食べないと遅れるぞ、二人とも」
「マズイ、本当に遅れる」
「ごちそうさま」
俊作の言葉で時計を見て焦る和行だが、陽一の方はなんだかんだで食べ終わっていた。結構ちゃっかりものである。
「おそまつさま。ちゃんと歯磨くんだぞー」
「はーい!」
「……………ごちそうさま!」
「はい、おそまつさま」
陽一に続いて和行も洗面所に行って歯を磨きに行く。
その隙に食器をシンクに持っていく。洗うのは二人が出かけた後なのだ。
入れ替わって陽一がキッチンに来た。
「ママ〜」
「はい、カバン。ハンカチとティッシュはこっちに入れといたからな。お弁当もな」
「うん。パパー、はやくー」
急かされた和行がソファに置いてあったカバンとキーを持ち、
「陽一、行くぞ!」
「はーい!」
慌ただしく駐車場に向かった。
それを俊作も追う。お見送りだ。
「じゃあ、行ってくる」
車の扉を開ける前、俊作への毎朝恒例の挨拶をする。
「ヘンな勧誘に引っかかったり、ましてや家に上げたりするなよ。客が来たらちゃんと誰か確かめてから開けるようにな」
「分かってるって。子供じゃないんだから」
俊作は和行の心配を笑顔で吹き飛ばしているが、和行の顔はあくまで真剣だ。
大げさな、と言われるかもしれないが、俊作にはちょっとつけ込まれやすい雰囲気がある。にこにこと笑顔を絶やさないからだが、それをセールスマンにも振りまいていては『引っかけてくれ』と言っているようなものだ。
和行の心配はそんな連中が最愛の妻に手を出しはしまいか、と言うことだった。
ちょっとぼやぼやしたトコのある妻だから、勢いに押されてあれよあれよという間にヤられちゃってました、では笑い話ではすまない。
冗談じゃない。
そんな見も知らぬ―知ってても同じだが―男に俊作を持って行かれるなんて。

そんなこと神が許しても自分は絶対に許さない!!

俊作の視界の範囲外でぐっと拳を握りしめた。
「子供の方がしっかりしてる。本当にちゃんと確かめてから開けるように」
決意は表に出さないが、俊作の肩を掴んで和行はマジな顔で注意する。
大げさなくらいがこの妻には丁度良い。
和行があまりに真剣なので吃驚して目を見開くが、
「わかった。注意する」
安心させるようににっこり微笑んだ。
「よし」
こちらもひとまず安心してにこりと微笑み返す。
「行ってきます」
チュッ
「行ってらっしゃい(はぁと)」
チュッ
軽く抱きしめあって互いの頬に出勤時の挨拶を交わす二人。
毎朝の年中行事で、これがその日一日の気分をも左右することもあるのだ。
「陽一も行ってらっしゃい」
そして既に車に乗り込んでいた息子にも、爽やかな笑顔で挨拶をする。
「いってきまーす!」
車の中から窓に張り付いて陽一も挨拶を返した。
「出発ー!」
「しゅっぱぁーつ!!」
「行ってらっしゃーい!」
夫と息子を乗せた走り去る車を、妻は見えなくなるまで見送った。

そして妻で母親でもある俊作の仕事が、今から始まるのである。




----------

<のりこさんのコメント♪>

とりあえず、朝編はここまで。
次はお昼から夕方だ!(でもネタはまだ出来上がってない(爆))



もちろん続きはしっかり頂いておりまする〜♪ 楽しみ楽しみ♪

ところでなんで3人一緒にお風呂はダメなの?
っていうか、青島くんが浅川さんと一緒に入るのがダメなんでしょね。
なんでってそりゃあ・・・。
だって青島くんとお風呂・・・陽一くんと背中の流し合いしたり、一緒に
あひるちゃんで遊んだり、どっちが長く潜ってられるか競争したり・・・
目の前に延々青島くんのぷりぷりの(再び死語)裸体が・・・げふげふん。
ともかく、浅川さんがそんなもん見ちゃったら・・・ねぇ。
俺なんかとは比べ物にならないくらいヤバイ。青島くんの身やばし。
子供の前でそんなこたぁできないから〜。
3人一緒のお風呂はダメなのでした。きっと過去の教訓だろう(←大笑)

しかし駐車場で何やってんねん、君ら。しかも毎日。
・・・陽一くんの次にオイシイのはそんなのを毎日目撃できる
近所の奥様だな。←しかも隣だったら壁コップだ!(爆)




前の話を読む
続きを読む
戴き物に戻る
TOPに戻る