むらよし旅日記・其の十:そしてサイクリングは北海道へ

『キャンピング班合宿』道央編

7月27日〜8月1日
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不安を胸に道央をゆく

 もともとこのキャンピング班合宿は27日に集合して翌日夕張へ、という予定だったが前夜苫小牧港でメンバー全員が集まったので、一日早く、少し距離はあるがいきなり夕張まで足を延ばせることになった。
 でも、…5人しか集まらなかった。二年生が私を含め2人、三年生以上は不参加という寂しい状況。果たしてこれで新入生3人(含女子2人)に、走行の体力面・安全面やキャンピングの諸技術、また精神面についての面倒を見きれるのか。そもそも上級生が来ないのは、私という存在が「後輩として全然かわいくない」からではないかという被害妄想的な疑惑も残る。(注:あくまで当時の心境)
 しかしそんな心の動揺を一年生にさとられる訳にはいかない。そんなさまざまな覚悟をして、道央のエッセンスたっぷり楽しみなはずの班合宿に臨んだ。

7月27日(土)「バリバリ夕張」の正体

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苫小牧の公園を出発
 通例合宿中は一年生が「先頭地図読み」をするものだが、今回の一年生は3人とも初めての合宿参加ということで、今日だけは2年生が先頭を引っぱることにした。時折雨が降る中ややハイペースで夕張に向かう。途中追分駅で休んでいたら駅員と仲良くなり、缶コーヒーをもらったりした。
 夕張市に入った所にある滝の上公園で昼食。パンにいろいろ塗ったり挟んだり、いつものキャンピング班らしい昼食である。ここには夕張川『竜仙峡』が流れていてなかなか壮観だった。
 午後3時半頃には夕張“市街”に着いた。いや、どこが市の中心街なんだろうと『JR夕張駅』を探しながら走っていたが、街らしい街もなくいつの間にか過ぎ去っていた。 なんだこのサビレようは・・・、本当に“市”なのか?…「バリバリ夕張」その正体は、炭鉱の閉山でメロン以外の産業を亡くした農業の村だった。
 ともかくファミリースクールという設備で風呂に入る。初日から風呂とはキャンピング班らしくなく(?)幸先いい。近くのサイクリングセンターで洗濯もできた。
 設営は石炭村キャンプ場、何と設営料タダ。しかし蚊が異常に多く、さらにタチ悪いのは家族連れのオートキャンパーが多いがまあいいか。さて夕食の買い出しに行ったら、午後6時きっかりにキャンプ場近くのスーパーが閉店してしまうという予想外の事態が起こってしまった。かろうじて商店街にまだ開いている店を見つけ、カレーの食材を入手した。さらにここに来たらやっぱり・・・安めの夕張メロンを購入した。
 おいしいカレーとおいしいメロンを食べ終ったら、結構遅い時間になっていた。隣のキャンパーがまだやけにうるさいが、我々はそれぞれのテントに入った。

7月28日(日)神様仏様オッサン様!

 何か隣のキャンパーが「王様ゲェ〜ム!」とかで一晩中うるさかったようだ。おかげで眠れなかった一年生もいる。
 朝食を食べ終る頃、他のキャンパーのオッサンが「そこの若いの!」とか言って、鰍鍋とうどんの余りを大量にくれた。おいしいのだがもう朝食後、食べきれなかった。他にも茄子とシシトウ、ウインナーまでもらったので、この時は「荷物が増えて迷惑だな〜」と思ったが持ち運ぶことにした。これが後に非常に有難いものになるとは誰も想像できずに・・・。
 今日から先頭を1年生に交替で任せ、まず峠を一つ越える。ここで私の自転車パンク。せっかくだから修理法を一年生に見学させる。そしてこの合宿の一つのハイライト、桂沢湖に向かうダートに足を踏み入れた。昼食の買い出しが出来なかったので、山中で補給食を採ることになる。さてそのダート、いきなりごっついガレガレの急な登りで、自転車に乗っては走れないので押して歩いた。ここは北海道の山の中、「熊出没注意」の標識が恐怖を煽る。各自ベルを鳴らしたりラジオをつけたりと対策をこうじた。ライダーが一人我々を抜いていったが、それ以降山中で人に会うことはなかった。
 地図で見るより明らかに長い、ガレた急坂をゆっくり足で登ってゆく。あまりに長いのですっかり元気をなくしてしまった一年女子もいる。不安のドン底にある彼女を励ましつつ、やっと峠らしいところに着いた。もはや目的地の芦別には届きそうにないので、今日は「桂沢湖までにしよう。」ということになった。

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炭鉱跡の見えるダートを降りていく
 ここからも大変である。下りもガレガレの急坂、マウンテンバイクの人は比較的楽そうに下山してゆくが、ランドナーは大変。私も2回ぐらい転倒したが、一年生のひとりは自転車に乗っては転び、乗っては転ぶのでついには下りでも押して歩くようになった。 どうやらこの道は一帯の炭鉱が閉山になってからはもう廃道同然らしい。がんばれ!
 長い長いダートを越えようやく桂沢湖のダムに到着し、安堵のため息をする一同。しかしキャンプ場に降りるつづらった坂で、一人が曲がり切れずに崖下に「消えた」。後ろで見ていた私は顔面蒼白になったが、彼と彼の自転車は繁っていた草木に引っかかっており、どちらも大事には至らなかった。最後まで油断しちゃいけないね。
 近くにはありがたいことに温泉施設があり、ここで疲れを癒す。今夜は面倒くさいし近くに商店もないので、ここのレストランで夕食を取ろう、ということにし、しばらくロビーでうだうだ。ここで私と「もう1人の二年生」の世紀のエアホッケー対決! 結果は私の逆点負け。
 さて夕食だ、と思ったらレストランが夜7時で営業終了していた。ついさっきじゃないか! 何をうだうだしていたんだ。何とも間が悪すぎ。仕方なく自炊することにしたが、しかしここはまだ山の中、スーパーなどありはしない。唯一のおかずは今朝オッサンにもらった食材! 助かった〜、神様仏様オッサン様!である。チープだが、食事のありがたさをかみしめた。
 ここには狐がよく出没する。昨日の昼食で残った2枚の食パンが、あっさりこいつらに奪われてしまった。ゆ、許せん。

7月29日(月)おいしい一日

 一部ダートは残るが快適な国道を下りて、昼前には上芦別公園でフルーチェパンにありついた。ようやく時々陽もさすようになって、富良野に向かう道では、すれ違うざまにサインを送り合うライダー・チャリダーも多い。

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ラベンダー園で花に包まれる
 いよいよ「北海道のへそ」富良野盆地へ。まずはワイン工場を見学。ワインの試飲は疲れた体にけっこうイケる。そして一直線のアップダウンの道を走って中富良野町営ラベンダー園に。写真で見たラベンダー園の印象とはちょっと違うが、斜面がうす紫に染まっていて奇麗である。みんなで「ラベンダーソフトクリーム」も食べてみたりする。
 スーパーのおばさんの薦めでジンギスカン鍋の食材を買う。昨夜の貧相なおかずに比べて今夜は「にくにくしている」。森林公園キャンプ場に設営し、食事の前に「ラベンダー風呂」に入るが混んでいるしどこらへんがラベンダーなのかよく分からなかった。風呂を上がって歩いていたら、キャンプ場で同サイクリング部内のポタリング班に遭遇! 向こうさんも元気そうである。
 今日は、ワインにラベンダーソフトクリーム、ジンギスカン鍋そして近くのキャンパーからもらったスイカと、「おいしい一日」であった。

7月30日(火)富良野・美瑛ポタリングモード

 この日は十勝岳の方へ登ろうという強硬な意見もあったが、私はもう疲れてるし一年生も多分そうだろう。山のほうは雲が立ちこめていて景色が望めそうにないぞと説得して、富良野・美瑛ポタリングモードに。
 まず富田ラベンダーファームでゆっくりぶらぶら、さらに日の出公園ラベンダー園もぶらぶら、いいかげんラベンダー色も見飽きてきた。ここで同サイクリング部内のファーストラン班合宿の連中発見! 向こうも最高学年は二年生、「でも決定的な違いがあるんだよなあ」とキャンピング班には女性がいることをうらやんでいた。ここで昼食をお互い近くで食べた。ウチらはスパゲティ。

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美瑛の「ロールくん」
 ここまであまりにゆっくりしすぎたので、美瑛に入り込んだのは夕方になってしまった。どこまでも続くなだらかな丘、丘。うーん北海道だ、小雨気味なのは残念。拓真館という写真館では素晴しい写真を展覧するが、閉館時間間際だったのでゆっくり見られなかった。
 今日はあまり距離は稼げず、予定より10kmは手前の美瑛のキャンプ場でランは終った。明日は長距離になりそうである。お手軽マーボナスを食べ終って、今夜も元気な一年生のパワーによって長く楽しいだんらん。
 合宿に伴いがちな諸不満はどうでもよくなってきたが、そろそろ2日後からのサイクリング部全体合宿や後ランに向けた不安材料が気になってきた。

7月31日(水)長かった班合宿のつらさを忘れる

 うっかりタレの付いていない納豆を買っていた。まずい朝飯。ともかく青空も見える美瑛の空の下を北に向かう。やがて旭川の直線道路、単調なので走ってて眠くなる。走る、ひたすら走る。
 ほぼノンストップで昼時に上川に到着。ここは自称ラーメン日本一の町、ってことでその日本一のラーメン屋で食べてみる。「・・・・・・。」誰も味については語ろうとしなかった。
 なだらかな登り坂途中、同サイクリング部内の山楽班とすれ違いつつ、以外に早く層雲峡に到着、早めに狭いキャンプ場の一部を陣取った。ここで私は生水を飲んで腹の調子をおかしくした。ともかく層雲峡温泉につかって、近くで洗濯もできた。
 班合宿のランもほぼ終り、買い出しや炊事の手間も班合宿当初よりはだいぶ手際良くなってきたかな? ハヤシライスを食べた後、最後の夜ということで小規模なコンパをした。北海道は七飯産の林檎ワイン、その甘い香りに長かった班合宿のつらさも忘れる。後には楽しい思い出が残る・・・。

8月1日(木)登山もするキャンピング班

 私は15泊連続テントに泊まった。これにてしばしテントからお別れ。

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大雪山黒岳山頂にて
 キャンピング班特製コッフェル弁当(ただの焚き込み御飯)を持って、今日は自転車を降り大雪山黒岳登山。ファーストラン班らと共にロープウェー、そしてリフトで7合目まで。ここからは足で登山。なかなか登りごたえのある登山、やがて黒岳山頂に到着。
 霧が深く、コッフェル弁当を食べながら晴れるのを待つ。時々晴れかけて、御鉢平の方の残雪とかが垣間見えるが、すっきりとは晴れてくれない。あきらめて、たくさんのリスが旅人を楽しませてくれた山頂を後にして下山する。層雲峡方面は晴れていて、川が大地を谷に刻む雄大な景色なんだが。五合目のロープウェー乗り場まで降りてやっとトイレに。
 層雲峡で今日も登山者臭い共同温泉につかり、サイクリング部全体合宿の集合地、層雲峡青少年旅行村へ。人数がグンと増えて賑やかになったが、すでに富良野などで他班に遭遇しているので、全体合宿初日の感動は少なかったりする。これにて班合宿は終了、しかし今夜の宿はバンガローで、食事は班ごとに自炊ということで、キャンピング班今合宿最後の夕食。それは一年生が「死ぬほどおいしい」といってくれたクリームシチューであった。
 6泊とけっこう長めの班合宿を二年生2人で協力して率い、無事(?)一年生を全体合宿に送り届けることが出来て一安心。しかし全体合宿からは会計係という仕事もあるので、また気を引き締めなくてはならない。これから、これから。


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