8月9日(日)お尋ね者、北への逃避行
昨夜のアルコールが抜けない。部屋には死屍累々とした連中が、しかしごぞごぞと起き出して、いずこかへ消えて行く。サイクリング部全体合宿は終った。私も消えなければならない・・・。
だめだ。急に独りになんてなれない。長い合宿の間に、すっかり自主性を失ってしまったのか。とりあえず後輩I島と場外中央卸売市場へ行き、実家に松前漬けなどお土産を送った。
午後まで後輩達とうだうだしていたが、どうにも解決策がなく、仕方無く別れた。走らなければ生きてはいけない。北都札幌を出発して、隣の町まででも、走る。ペダルを漕ぐ足は、いかにも弱々しい状態だ。
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8月10日(月)さいはての駅にて
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8月11日(火)「ここまで来れば北海道」
後々聞いた話によると、夜のキャンプ場前は“走り屋”がとてもうるさかったとか。しかし私はちっとも気が付かなかった。多分、得な性格なのだろう。
針路を内陸側に取ることも考えたが、やっぱりこのまま日本海沿いを北上することにした。もうパトカーは追ってこまい。天気はいま一つである。
ニシン番屋跡がある道の駅小平(おびら)では、2人のチャリダーに会った。昨日のキャンプ場でも会った男女だ。彼等も昨日一緒になったと言う。W月さんとN谷さん。とてもフレンドリーで、この先ご一緒させてもらうことにした。速いペースで引いてもらう。まさかこんなところで集団走行するだなんて思ってもみなかった。
かつてはこの“天売国道”沿いに国鉄羽幌線が走っていた。時々見える廃線跡が当時を偲ばせる。列車の車窓からも、海の向こうに焼尻・天売島がうっすらと見えていたのだろう。もうここには永遠に鉄道が復活することはない。
そんな旧羽幌線の中心地・羽幌町で、パンを買い昼食。ゆっくりダベる。ここでN谷さんは是非温泉に入っていくということで、彼女を残し、私とW月さんで先に北へ進む。海岸沿いとはいえ意外にアップダウンがある。「ここまで来れば北海道」という看板が立っていて、確かに広々とした丘々の眺めである。
今日も約120kmと、よく走った(つもり)。天塩町にある鏡沼キャンプ場まで。大きな沼と、沼岸の緑の芝がすっごくいい感じなのだ。ここでまたA本君というチャリダーに出会い、3人でカルビ焼肉をやった。さらにここに父娘で来ている上流家庭チャリダーがいて、夕張メロン等を食べさせてもらった。こうしていろんな人に気軽にコンタクトが取れるのが、北海道ソロ・ツーリングのいいところだ。
8月12日(水)今日にも宗谷岬到達か?
しかし自分は自分の都合で旅を進めたいので、また一人でキャンプ場を出発した。海の向こうにはうっすらと利尻山。左手の海と、右手のサロベツ原野で、地球が丸く見えるような気がする。
季節外れのサロベツ原生花園に寄り道をした戻りの道で、W月さんとA本君にすれ違った。あれ、キャンプ場で見かけた女の子(M井さん)まで取り込んでいる。またどっかで彼等に会うだろうか。
広野の道は長すぎて眠くなる。ぼちぼち疲れもたまっているので、かなりゆっくり走る。今日にも宗谷岬に到達するつもりだったけど、やめておこう。それにしても、明日以降の予定が全然決められない。こんなんでいいのだろうか。
「最北の温泉」という触れ込みに引かれ、稚内温泉に入る。ここも長万部と同じくナトリウム塩化泉の高張性だ。風呂から上がっても、なかなか体が冷えないのはいいことだ。
ここまで北にくると、その厳しい気候のためか、丘には木が育たず、ひたすら緑の草原が続くような景観。これがけっこう奇麗なのだ。
野寒布岬へ寄ってみると、ま〜たいやがった、W月・A本・M井の3人組である。私が温泉に入っている間に先回りしたようで、「何でオレらより遅く来るんだよ〜」と。結局、今日もこの先、行動を共にすることになった。
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