7月30日(木)(続き)仲間との生活が始まる
今日はキャンピング班合宿2日目にあたる。みんなは岩手県側から、雨の八幡平を越えてやってきた。とても大変だったらしいが、無事合流できて一安心。昨日会ったH瀬もいる。ちなみに私は班合宿皆勤記録がわずか一日跡絶えたが、まあいいか。
切留平キャンプ場では、雨の中の設営はブルーなので、バンガローを借りることにした。近くの東トロコ温泉にも入り、長い下り坂で冷えた体を暖める。それにしてもずいぶんゆっくりしてるなぁ。
みんなでの炊事・食事も楽しい。長い個人ランの後だけに、合宿のありがたみもひとしおなのだ。そういえば、ずいぶんダレた前ランだったので、ベテラン(のつもり)らしからぬかなと考えていたが、自分のペースで走れる人こそがベテランなのだと思い直した。
7月31日(金)東北みずうみ巡りもラスト
合宿のメンバーは7人。個人ランと比べて、やはりゆっくりとした展開でランは進む。まずまずの天気の下、鹿角花輪から先は、私の2年前のランとしばらくカブることになる。登りの途中、水が湧いているポイントがあった。“力水”という名のその水を飲むと、何だか力がみなぎってくるような、気がする。
このところの涼しさで、すっかり体力気力を取り戻した私は、快調に坂を登る。一緒になって走るのは、合宿初参加のランドナー乗り、I藤(正)君。こいつは強い。峠手前から勝負になり、負けん気起こして一応私が勝ったが、これってオトナ気ない?
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8月1日(土)奥入瀬川の流れにはゞまれて
十和田湖畔を少し進むと、東北最北の県、青森県に入る。空はだんだん晴れてきて、まずは十和田湖のシンボル、乙女の像を散策することにした。合宿初参加の女の子T村さんが、班長K林女史と一緒に、乙女の像の真似をしたりしている。
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8月2日(日)チャリンコで見に来たねぶた祭り
朝食後、女子二人は決死の覚悟で酸ヶ湯へ。オジサン達の目線を、親切な(?)オバサン達にガードしてもらったらしい。
私は出発前の空いた時間にオカリナを吹く。合宿中、時々役に立っている。しかしウクレレは未だに弾いていない。
土砂降り模様の中、八甲田山の西側をぐるっと半周する形で、雪中行軍遭難者銅像に着いた。日露戦争前に起こった空前絶後の雪山遭難『八甲田山死の彷徨』の舞台で、それを扱った新田次郎氏の小説を読んだばかりなので、併設の資料館も興味津々に見学することができた。
そして今日は大雪ではないが大雨だ。青森市街に向かっての長い下り坂、手がかじかんでしょうがない。私とI島、I藤の3台のランドナーはブレーキが効かないので、MTB軍団を置き去りにして、ものすごいスピードで坂を下りて行く。夏の盛りに霜焼けを起こしそうだ。
ようやく里に下り、森林公園にテント設営。管理人のオッチャンの津軽弁は意味不明。ともかく近くのラドン温泉で凍えた体を暖める。
今夜はこれからが本番だ。丁度、青森の街で『ねぶた祭り』の前夜祭があるのだ。大通りに駆けつけてみると、雨だというのに既に人だかりが出来ている。私もいい場所を確保し、見入る。通りには次々と、かっこいい山車がやってくる。「ラッセラーラッセラー!」「ラッセラッセラッセラー!」…雨を弾かんばかりの掛け声、胸踊る太鼓の音。そして明るく輝く、様々な形の山車達がダイナミックに前進していく。
思えば、初めて『ねぶた』の存在を知ったのは、小学校の教科書の挿絵である。はるか北の地・青森に、歌舞伎風の山車による大きなお祭りがあるという・・・。
そこに、今、僕はいるのだ。しかも隣街にでも出かけたように、チャリンコで、自分の足で。小学校以来の時の大きさとか、自分の足による達成感。それが祭りそのものの感動と増幅し合って、思わず涙がにじんでしまった。ええい、祭りだ!祭りだ!
足元に転がってきた鈴や、自衛隊の行列が落としていったウチワを拾った。大切な思い出のおみやげ。カラスハネトと呼ばれる不良グループ達が祭りを荒しているのも、一つの名物。大満足で、森林公園のテントへ帰った。
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8月3日(月)さらに北の大地へ
雨上がりの朝。そこそこ大きな青森ベイブリッジを渡って、フェリー埠頭へ。ここでT木(優)先輩登場、行動を共にす。東北縦断の旅はここまでで、本州から足を離し、フェリーに乗り込む。やがてフェリーは出航。デッキから後ろを眺めると、青森の街並、そしてかすんで見える山々、青い森。…あの向こうの向こうから、私はやってきたんだ。万感の想いを本州に残し、『津軽海峡冬景色』を口笛で吹きながら船室に戻った。
4時間近くして、北海道函館港で下船。実走での北海道上陸ということで、小さくバンザイ。星形の堀を今に残す五稜郭を観光し、また北に向かう。大沼街道の赤松並木はまるで、北海道にやってきた旅人を迎えて、導いているかのようだ。
赤井川という所の民宿まで走って、キャンピング班合宿は終り。暑かった個人前ランとは対照的に、涼しくて、むしろ寒さに震えることもある旅となった。深い感動の数々も、忘れられそうにない。