むらよし旅日記・其の二十二:北へ。TSUKUBA to SOYA

『二の巻:キャンピング班合宿』チャリンコで見に来たねぶた祭り

7月30日〜8月3日

7月30日(木)(続き)仲間との生活が始まる

 今日はキャンピング班合宿2日目にあたる。みんなは岩手県側から、雨の八幡平を越えてやってきた。とても大変だったらしいが、無事合流できて一安心。昨日会ったH瀬もいる。ちなみに私は班合宿皆勤記録がわずか一日跡絶えたが、まあいいか。
 切留平キャンプ場では、雨の中の設営はブルーなので、バンガローを借りることにした。近くの東トロコ温泉にも入り、長い下り坂で冷えた体を暖める。それにしてもずいぶんゆっくりしてるなぁ。
 みんなでの炊事・食事も楽しい。長い個人ランの後だけに、合宿のありがたみもひとしおなのだ。そういえば、ずいぶんダレた前ランだったので、ベテラン(のつもり)らしからぬかなと考えていたが、自分のペースで走れる人こそがベテランなのだと思い直した。

7月31日(金)東北みずうみ巡りもラスト

 合宿のメンバーは7人。個人ランと比べて、やはりゆっくりとした展開でランは進む。まずまずの天気の下、鹿角花輪から先は、私の2年前のランとしばらくカブることになる。登りの途中、水が湧いているポイントがあった。“力水”という名のその水を飲むと、何だか力がみなぎってくるような、気がする。
 このところの涼しさで、すっかり体力気力を取り戻した私は、快調に坂を登る。一緒になって走るのは、合宿初参加のランドナー乗り、I藤(正)君。こいつは強い。峠手前から勝負になり、負けん気起こして一応私が勝ったが、これってオトナ気ない?

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国道103号・発荷峠
 そこは発荷(ほっか)峠。十和田湖を見下ろす展望台だ。湖に突き出す半島など、その地形も目のあたりにできる景色だ。十和田湖は、猪苗代湖や田沢湖と並ぶ東北の大湖のなかで、いちばん北に位置する。そんなカルデラの青い湖も、やがて霧が立ちこめて姿を隠してしまった。
 今日は発荷峠を湖畔側に下りたところにあるキャンプ場まで。夕食はスキヤキに、秋田名物きりたんぽを入れてみた。うまい。

8月1日(土)奥入瀬川の流れにはゞまれて

 十和田湖畔を少し進むと、東北最北の県、青森県に入る。空はだんだん晴れてきて、まずは十和田湖のシンボル、乙女の像を散策することにした。合宿初参加の女の子T村さんが、班長K林女史と一緒に、乙女の像の真似をしたりしている。

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奥入瀬渓谷・銚子大滝
 湖畔の道をアップダウンした後、いよいよ奥入瀬。十和田湖の水が沢となって流れる渓流と、左右の高い崖から流れ落ちる幾多の滝。もう最高の、日本一の瀑布街道だ! チャリではスピードが速すぎると思うぐらい。ここはぜひ、遊歩をしてみたいものだ。
 午後は、今回の旅で東北最後の難関となる、傘松峠への登りだ。南北八甲田山の懐に飛び込む、森の中の800mアップ。ここでもI藤君とのマッチレース状態となり、というか彼についていくのが精いっぱいだ。これほどアツい合宿は久々。あっと言う間に峠手前の睡蓮沼に着いてしまった。ここからは沼越しに、間近にせまる八甲田山を眺めることができた。
 峠ではスプリント勝負になった。先行するI上君を差した私は、やっぱりオトナ気ない? いいかげん、疲れが足にきている。
 そんな疲れを癒すのが、酸ヶ湯温泉である。千人風呂は強酸性の混浴で、しかし女性はオバサンしか見当たらない。合宿の女子二人は、「オジサン(の目線)がイヤで」断念したらしい。いい湯だったのに。ところで私もオジサンなのだろうか?
 テントは隣のキャンプ場にて。少々酒も入った。

8月2日(日)チャリンコで見に来たねぶた祭り

 朝食後、女子二人は決死の覚悟で酸ヶ湯へ。オジサン達の目線を、親切な(?)オバサン達にガードしてもらったらしい。
 私は出発前の空いた時間にオカリナを吹く。合宿中、時々役に立っている。しかしウクレレは未だに弾いていない。
 土砂降り模様の中、八甲田山の西側をぐるっと半周する形で、雪中行軍遭難者銅像に着いた。日露戦争前に起こった空前絶後の雪山遭難『八甲田山死の彷徨』の舞台で、それを扱った新田次郎氏の小説を読んだばかりなので、併設の資料館も興味津々に見学することができた。
 そして今日は大雪ではないが大雨だ。青森市街に向かっての長い下り坂、手がかじかんでしょうがない。私とI島、I藤の3台のランドナーはブレーキが効かないので、MTB軍団を置き去りにして、ものすごいスピードで坂を下りて行く。夏の盛りに霜焼けを起こしそうだ。
 ようやく里に下り、森林公園にテント設営。管理人のオッチャンの津軽弁は意味不明。ともかく近くのラドン温泉で凍えた体を暖める。

 今夜はこれからが本番だ。丁度、青森の街で『ねぶた祭り』の前夜祭があるのだ。大通りに駆けつけてみると、雨だというのに既に人だかりが出来ている。私もいい場所を確保し、見入る。通りには次々と、かっこいい山車がやってくる。「ラッセラーラッセラー!」「ラッセラッセラッセラー!」…雨を弾かんばかりの掛け声、胸踊る太鼓の音。そして明るく輝く、様々な形の山車達がダイナミックに前進していく。
 思えば、初めて『ねぶた』の存在を知ったのは、小学校の教科書の挿絵である。はるか北の地・青森に、歌舞伎風の山車による大きなお祭りがあるという・・・。
 そこに、今、僕はいるのだ。しかも隣街にでも出かけたように、チャリンコで、自分の足で。小学校以来の時の大きさとか、自分の足による達成感。それが祭りそのものの感動と増幅し合って、思わず涙がにじんでしまった。ええい、祭りだ!祭りだ!
 足元に転がってきた鈴や、自衛隊の行列が落としていったウチワを拾った。大切な思い出のおみやげ。カラスハネトと呼ばれる不良グループ達が祭りを荒しているのも、一つの名物。大満足で、森林公園のテントへ帰った。

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8月3日(月)さらに北の大地へ

 雨上がりの朝。そこそこ大きな青森ベイブリッジを渡って、フェリー埠頭へ。ここでT木(優)先輩登場、行動を共にす。東北縦断の旅はここまでで、本州から足を離し、フェリーに乗り込む。やがてフェリーは出航。デッキから後ろを眺めると、青森の街並、そしてかすんで見える山々、青い森。…あの向こうの向こうから、私はやってきたんだ。万感の想いを本州に残し、『津軽海峡冬景色』を口笛で吹きながら船室に戻った。
 4時間近くして、北海道函館港で下船。実走での北海道上陸ということで、小さくバンザイ。星形の堀を今に残す五稜郭を観光し、また北に向かう。大沼街道の赤松並木はまるで、北海道にやってきた旅人を迎えて、導いているかのようだ。
 赤井川という所の民宿まで走って、キャンピング班合宿は終り。暑かった個人前ランとは対照的に、涼しくて、むしろ寒さに震えることもある旅となった。深い感動の数々も、忘れられそうにない。


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