なぜ、おかあちゃん?
おかあちゃんは小次郎君の母猫です。小次郎を発見した後ケージで保護している間、ずっとケージの傍らに付き添って見守っていてくれた優しいおかあちゃんです。小次郎をケージから出して遊ばせている時は、何度も遠くからこっちへ来いと呼んでいましたが、結局私が小次郎を放さないまま家に入れてしまったため、その後はどこかへ行ってしまったようでずっと見かけることはありませんでした。
それから1年たった1999年の春、今度は茶ブチの子猫を連れておかあちゃんがどこからか現れました (この子猫の父親がをやじ君だと思われます)。この茶ブチの子猫は順調に育ったようで、母猫の後をついてぴょんぴょんととび歩いていました。それはそれでかわいかったのですが、そのころインターネットで地域猫などの話を知るところとなり、世の中には不幸な野良猫がたくさんいることや、多くの動物達が虐待されたり保健所で殺処分されていることも知りました。幸い我が家のご近所は皆動物好きで何かしらの動物を飼っているお宅がほとんどなので虐待などはありえないと思いましたが、だからといってこのまま野良猫がどんどん増えてしまえば、状況が悪いほうに変わらないとも限りません。
そこで、これ以上野良猫を増やさないために、この母猫に避妊手術をする決心をしました。まず餌で懐かせて、触れるまでになったら捕獲して病院に連れていけば良い…そんなふうに考えていました。そして庭の一角におかあちゃん用のドライフードを置くようになりました。時には缶詰も奮発しました。そして、茶ブチの子猫とも子離れしてまた一人に戻り、夏が来て、秋が来て、冬が来て…結局いつまでたってもおかあちゃんは懐かず、決して1m以上に近づくことはできませんでした。非常に警戒心の強いおかあちゃんは、私が少しでも近寄るとダッシュで逃げてしまうのです。
そうこうしているうちに、2000年の年が明けてまた発情の季節がやってきてしまいました。我が家の周辺で避妊していないメス猫はどうやらこのおかあちゃんしかいないらしく、普段は見かけない猫達もたくさん来るようになり、我が家の餌場周辺はオス猫達の縄張り争いの中心地と化してしまいました。(それまでをやじ君は何度かおかあちゃんと餌場に来ていましたが、この時初めて現れたのが亀井君です。) そしてまた妊娠し、2000年の春先にはまた茶ブチの子猫が生まれたということでした。(というのは、近所の猫好きおばさんが、おかあちゃんと子猫が親子で引っ越していく姿を見たのだそうですが、その後すぐに何らかの理由で子猫は死んでしまったらしく、私が子猫を一度も見ることはなかったのです。)
そのうち、亀井君とをやじ君の縄張り争いからお兄ちゃんのマーキング問題が発生してしまったため、懐くのを待っている間も無く、強硬手段ではありましたが捕獲器による捕獲と不妊手術を敢行することになりました。(詳しくは 亀井君 のページを見てね。) そして亀井君とをやじ君の去勢手術が無事すみ、いよいよおかあちゃんの番だという時になって、事件は起こりました。
死んじゃったの?
亀井君とをやじ君の手術が済んでから、何度かおかあちゃんのために捕獲器をしかけましたが、警戒心の強いおかあちゃんはなかなか捕獲できませんでした。だんだん焦燥感が濃くなってきた2000年9月4日、おかあちゃんは交通事故にあってしまったのです。
翌朝、ご近所へ所用ででかけた母親が、その家のKさんから事故に遭った猫の話を聞きました。実際に猫を見かけたのはKさんのお友達でTさんという人で、我が家から100mほど離れた場所に住んでいます。詳細は次のような話です。
9月4日の晩、Tさんの息子さんが帰宅途中、前を行く車が突然スピードを落として徐行するのが見えました。何だろうと思い自分もそこを通りかかると、1匹の猫が道端に倒れています。どうやら自動車にはねられたようでした。Tさんの家はそこからすぐだったので、息子さんはひとまず自宅に帰りお母さんに猫のことを話しました。Tさんご一家はお母さん始めみなさん動物好きなので、お母さんはそのままでは猫がかわいそうだからと、埋葬してやるため段ボール箱などを持って現場へ向かいました。倒れている猫は三毛猫でした。そして、まさに猫に触ろうとした瞬間、猫は飛び起きて一目散に道をはさんだ茂みに隠れてしまったのだそうです。すでに夜遅い時間でしたし、あたりは薄暗くTさんは猫の姿を見失ってしまいました。そして翌朝、Tさんはもう一度猫が隠れたあたりを探しましたが、みつけることはできませんでした。
そして、私が猫を飼っていることをKさんから聞いて知っていたTさんは、もしかしたらうちの猫ではないかとKさんに話したのだそうです。Kさんはうちの猫が三毛猫ではないことを知っているので、その時は違う猫だということで話はついたのですが、念のためと思い私の母親に話してくれたのでした。
我が家の周辺をテリトリーとしている三毛猫は2匹しかいません。このおかあちゃんと上のお家にすむミケリン (本名チビ) ちゃんです。事故にあったのはおそらくこのどちらかだと思われました。私はおかあちゃんで無いことを祈りつつ、でもミケリンちゃんでもなければ良いのになどと考えながら、猫が逃げ込んだと聞いたあたりを何度も探しましたがみつかりませんでした。そして、上のお家の人から、チビちゃんがその日の夕方元気にしていた姿を見たと聞き、それにその日はいつまで待ってもおかあちゃんがごはんを食べに来なかったことから、事故にあったのはおかあちゃんであることが確定的になりました。
私は目の前が真っ暗になってしまいました。もっと早く無理にでも捕獲していれば、事故など遭わずにすんだのに…後悔しても後悔しきれませんでした。現場から逃げる元気があったんだから、どこかで生きているかもしれないし…と言う猫友の心強い励ましにわずかな希望を抱きながらも、おかあちゃんが現れないまま3日たち、1週間たつうちに、やはりだめだったのか…とだんだんあきらめの気持ちが強くなっていきました。
奇跡の生還!
そしてちょうど2週間たった9月19日、なんとおかあちゃんは帰ってきたのです!朝、出勤しようと車で家を出て坂道を下りていくと、下の家の軒先に三毛猫が立っていました。私は超ド近眼ですし車も動いているので一瞬のことであまり良くは見えなかったのですが、毛の模様から直感的におかあちゃんだと感じました。そして、昼休みに帰宅すると、母親もおかあちゃんらしき猫を見たというのです。うれしくなって何度も外へ出てはおかあちゃんが餌を食べに来ないか見に行きましたが、その日は結局姿を現しませんでした。
翌日もおかあちゃんは餌場に来ませんでした。私と母親が見た猫は別の猫だったんだろうか…そんな不安がよぎった3日目の夜、ちゃあこに夕ごはんをあげにいった父親が 「おかあちゃんが来てるぞ!」 と叫びました。私はあわてて玄関から飛び出し父親が指差す先を見ると、確かにおかあちゃんらしき猫がいます。しかし辺りはすでに暗く、外灯をつけても良く見えません。それに何だか顔つきが違う気もします。少し距離を置いて私と後から出てきた母親が目を凝らして見ていると、父親が玄関から懐中電灯を持ってきてその猫の顔を照らしました。そしてトレードマークの鼻のポッチン (黒い部分) を探しました。「ポッチンある?」 「良く見えないよ。」 「もっと近づいて照らしてみたら。」 「あるある。」 「じゃあ、やっぱりおかあちゃんだ。」 「わ〜い、帰ってきたんだ〜!」
3人で鼻のポッチンとおかあちゃんであることを確認してから、私はすぐに家の中へ飛び込んで缶詰を持ってきました。おそらく2週間以上も何も食べていないのでお腹が空いているはずです。おかあちゃんが行ってしまわないうちに、どうしても何か食べさせてやりたいと思いました。いつものうつわに缶詰をよそって差し出すと、おかあちゃんはしばらくじっとしてからやっと食べ始めました。本当は食べている隙をついてその場で捕獲したかったのですが、帰って来たばかりで刺激を与えてもいけないし、それに万が一失敗したらまたどこかに隠れてしまうかもしれないと思い、その日はそのまま見守ることにしました。おかあちゃんは缶詰を2口ほど食べただけで、またどこかへ行ってしまいました。
おかあちゃん2に続く
Last Update: 2003.2.3
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